故郷 (下)鲁迅

このとき、とても興奮して、なんと切り出せばよいかわからず、ただ、
 「あ!閏土さん、よく来たね」と発した。続いて、たくさんの話しが、数珠のように湧き出してきて:角鶏、跳魚ル、貝殻、チャー……、だが、何かがつっかいをしているようで、脳の中でぐるぐる回っているだけで、口から外に出てこなかった。
 彼は立ったまま、うれしさとさびしさが、入り混じったような顔をして、唇を動かすのだが、声にならなかった。
 彼はようやく、うやうやしい態度になって、はっきりと言葉を口にした。
 「旦那さま!……」
 ああ一、私はぞーっと身震いした。われわれの間は、すでに悲しむべき厚い壁に隔てられてしまったのを悟った。私も声をつまらせてしまった。
 彼はうしろを向いて、「水生、旦那様にごあいさつしなさい」と後ろに隠れていた子供に挨拶をさせた。この子はまさしく、二十年前の閏土だった。ちょっと痩せているのと、銀の首輪はしていないが。
 「五番目の子で、世間様にあまり出してないもので、人見知りして…」
 母と宏児が下りてきた。声を聞きつけたのだろう。
 「大奥様、お知らせはとうにいただいておりました。ほんとうにうれしくて、旦那様がお帰りになるって……」閏土は言った。
 「お前、どうしてそんな遠慮するんだい。昔は兄ちゃん、弟って呼びあってたんじゃないか。やはり以前のように、迅にいさんって、呼んであげなよ」母はうれしそうに言った。
母は閏土に席を勧めたが、彼は一度辞退したが、ようやく坐った。長キセルを卓に凭せ掛けて、紙包みを差し出して言った。「冬で、何もありませんで、家で作った青豆の干したのですが。旦那さんに、…」
 「暮らしはどう?」とたずねたら、頭を揺らすばかり。
 「とても苦しくて、六番目の子も、もう手伝うようになったんですが、食えなくて、世の中も物騒で、どこも、何をするのも、理由もなくお金を取られて、作物も不作で、育てたのを売りに行っても、いつも損してばかりで、元手にもならず、また売りに出かけなきゃ、腐らせるばかりで、……」
 頭を揺するばかりで、顔は皺だらけだったが、石像のように、皺すらほころびようがないのだった。彼は、苦しいことばかりで、それを言い出せなくて、しばらく沈黙のままであったが、ようやくキセルを手にとって、黙々と吸い始めた。
 母がたずねたら、家の方が忙しいので、明日には戻らなければならない、と。また昼もまだだ、というので、自分で台所に行って、炒飯でも作って食べるようにと言った。
 彼は出て行った。母と私は彼の状況を知り、嘆息した。子だくさん、飢饉、苛税、兵隊や匪賊のユスリ、役人、郷紳たちが、寄ってたかって、彼をまるで木の人形のように、手も足も出せないほど、めちゃくちゃにしてしまったのだ。母は言った、引っ越しで持って行かないものは、みな閏土にあげよう。彼に欲しいものを選ばせよう、と。
午後、彼はいくつか選んだ。長卓二竿、椅子四脚、香炉と燭台。それに台秤。また、ワラ灰も全部欲しいと言った。(我が家では煮炊きにワラを使うので、灰は砂地の肥料になる)私たちが出立するころ、舟で取りに来ることになった。
 夜、我々はとりとめのない話をして、翌朝はやく、彼と水生は帰っていった。
 それから九日が過ぎ、出立という日、閏土は朝早く来た。水生は来ず、5歳の女児に舟の番をさせていた。その日は一日中忙しかったので、話しをする暇もなかった。来客も多かった。送別の人、物を持って行く人、送別と物の両方兼ねる人も多かった。
 夜、我々が船に乗る頃、我が老屋のすべての、こわれかけた大小粗細なものは運びだされて、全くのカラになった。
 我々の船が進もうとしだすと、両岸の青山が黄昏の中で、濃い黛のようになり、連なって、船の船尾の方に去って行った。
 宏児と私は船窓にもたれて、ぼうーっとした外の景色を見ていた。彼が突然私にたずねた。「伯父さん、ぼくたちいつ帰ってくるの?」 
 「帰る? まだ出発してもいないのに、もう帰ること考えてるの?」
 「うん。水生と彼の処へ遊びに行くって約束したんだもん」黒い目を見開いて、たわいないことを考えていた。
 私も母も、茫然として、そして閏土のことに話が及んだ。母は言った。「あの豆腐西施の
楊さんがね、引っ越し荷物を整理しだしてから、連日のようにやってきてね。一昨日、灰の中から十何個もの皿と碗を探し出してね、議論の末、閏土が隠したんだと言ってさ、灰を運ぶときに、一緒に持ち出そうと:楊さんが発見して、鬼の首をとったように威張ってさ、あの犬じらし(我々の所で使う養鶏の器具:木盤の上に柵檻を乗せて、餌を入れて鶏は首を伸ばせば食べられるが、犬はじらされる故、かく言う)を掴むや、飛ぶがごときに走り去った。あんな高い靴底の纏足で、よくもまああんな速く走れるものよ。
老屋はだんだん遠ざかった。故郷の山水もしだいに遠ざかったが、名残惜しさは特に感じなかった。私の周りには、目に見えない高い壁があり、私ひとりを孤独にさせ、とても滅入ってしまった。スイカ畑の銀の首輪の小さな英雄の像は、この前までは、はっきりと思い浮かべることができたのだが、もうぼんやりしてしまったことが、私の悲哀を痛切にした。
 母と宏児はもう眠ったようだ。
 横になって、船底のさらさらと聞こえる水音を聞き、自分の道を進んでいるのだと思った。私は考えていた。ついに閏土と隔絶した、こんなところに来てしまったが、我々の次の世代は、まだ気持ちを通じることができて、宏児は水生のことを想っているではないか。
彼らが、二度と私のように、かけ離れてしまわないように願った。その一方で、彼らが気持ちを通じ合ってゆくために、私のような辛くて苦しい暮らしをすることもなく、閏土のように、辛酸で神経を麻痺させられるような暮らしをしなくて済むように願った。また、他の人のように、生活の辛さゆえに、そこから逃避してでたらめな生き方をしないように、心から願った。彼らには新しい生活を始めてもらいたい、と。我々の経験したことのない新しい生活を切に希望する。
 希望、について考えたら、忽然、怖くなってしまった。閏土が香炉と燭台を下さいと言ったとき、私は心の中でこっそりと笑っていた。まだ偶像崇拝してるのか、と。いつ何時も、片時も忘れずに。私の今いう希望とは、私が手の中でこしらえた偶像ではないか、と。
ただ、彼の願望は手の近くにあるもので、私のは、茫としてはるか遠くにあるに過ぎない。
 朦朧とするうちに、目の前に海辺の紺碧の砂地が広がってきた。私は思った。希望とは、
もともとあるとも言えないし、無いとも言えない。それは正しく、地上の道と同じである。
その実、地上にも、もともと道はなかった。歩く人が多くなって道になったのだ。
    1921年1月

2024年1月2日(火)、シネ・リーブル梅田にて『枯れ葉』を鑑賞。
「枯れ葉」と聞けばシャンソンの名曲を思い出すし、シャンソンと聞けば、その本場はフランスだ。ところが、本作はフランス映画ではなく、フィンランド・ドイツ映画。しかも、フィンランドの有名なアキ・カウリスマキ監督が“引退宣言”を撤回してまで撮った最新作というから、こりゃ必見!
若き美男美女の純愛モノもいいが、たまには不器用に社会の底辺で暮らす孤独な労働者同士のラブストーリーにも、目を向けたい。ロシアによるウクライナ侵攻を伝えるラジオニュースが流れる中、フィンランドのカラオケバーではじめて出会った中年男女の出会いは?その進展は?
それがスムーズに進まないのは想定通り。しかし、この中年男がアル中とは!しかも、ここまで運に見放されている男とは!
こりゃダメだ!と見放しかけたが、その中で生まれてくる奇跡的な結末に注目!これぞ弱き者、貧しき者にトコトン寄り添う(?)アキ・カウリスマキ監督の真骨頂!

『月下独酌』李白
『月下独酌』(げっか どくしゃく)とは、盛唐の代表的詩人・李白の詩で、春の庭で自分の影と月をともに宴会をするという幻想的で面白い詩ですが、どこか人間世界に背を向けた孤独感を感じさせる詩でもあります。

ここでは『月下独酌』の原文・書き下し文・現代語訳・解説・作者である李白の紹介をしていきます。

『月下独酌』の原文
月下独酌 四首 其一

花間一壼酒

独酌無相親

挙杯邀明月

対影成三人

月既不解飲

影徒随我身

暫伴月将影

行楽須及春

我歌月徘徊

我舞影零乱

醒時同交歓

酔後各分散

永結無情遊

相期邈雲漢
『月下独酌』の書き下し文
月下独酌 四首 其の一

花間(かかん)一壷(いっこ)の酒

独り酌(く)んで相親しむもの無し

杯を挙げて名月を邀(むか)え

影に対して三人と成る

月既に飲むを解(かい)せず

影徒(いたず)らに我が身に随う

暫(しばら)く月と影とを伴うて

行楽須(すべか)らく春に及ぶべし

我歌えば月徘徊し

我舞えば影零乱(りょうらん)す

醒時(せいじ)はともに交歓し

酔後(すいご)は各 (おの)おの分散す

永く無情の遊を結び

相期(あいき)して雲漢(うんかん) 邈(はるか)なり

『月下独酌』の現代語訳
月の下で独り酒を飲む 四首(その一)

春らんまんの花咲く庭に徳利が一つ。

相親しむ者もなく、一人手酌で酒を飲む。

杯を月に向けて「一杯どう」と呼びかければ

自分の影も現れて、これで全部で三人だ。

月はもとより酒なんて飲めやしない。

影なんぞ自分の動きを真似るだけで、いてもいなくても同じだ。

とはいえ、しばらくは月と影を友として

春を存分に楽しもう。

酔って歌えば月もふらふら

踊れば影もくねくねと。

酔いがまわってないうちは楽しい時間を共に過ごし

酔いつぶれれば月は月に、影は影に、みな元の姿に戻っていく…

月よ影よ、末永く付き合おうではないか。

次に会う時はあのはるかな天の川で。

『月下独酌』の解説
第1句…「花間」は「花咲く木々の間」。春らんまんの庭園が舞台です。「一壺酒」は「徳利のような壺に入った酒」。

第2句…「独酌」は「酒を手酌で杯に注ぐ」。

第3句…「邀」は「招く」。一人飲んでいるうちに、気がつけば月が出てきていました。

第4句…「影」は自分の影。月が皓皓と照って地面にくっきり自分の影が。ああ、これで自分は一人ではない。影に向かえば、自分と月と三人になった。

第5句…「不解」は「理解しない」。月はもとより酒を飲むことを理解してはいない。

第6句…「徒」は「虚しく・いたずらに」。影もあってなきがごとし。自分が動けばそれにつれて動くだけ。

第7句…「将」は並列を表します。「~と」。

第8句…「行楽」は「楽しいことをする」。「須」は再読文字で「すべからく~べし」と読み、「ぜひそうすべきだ」という意味になります。「及」は「逃さない」。
第9句…「徘徊」は「さまよう」。

第10句…「零乱」は「乱れて動く」。

第11句…「醒時」は「酔いがまわっていない時」。「同」は「ともに」。「交歓」は「互いに楽しく過ごす」。

第12句…「酔後」は「酔いつぶれた後」。「各分散」は「それぞれが散り散りになっていく」。

第13句…「永」は「いつまでも」。「無情」は「感情を持たないもの」。ここでは「月と影」。「遊」は「交遊」。

第14句…「再期」は「再び会う約束をする」。「邈」は「はるか彼方である」。「雲漢」は「天の川」。

春の夕べ、暑くもなく寒くもなく、花の香りに包まれた美しい庭園で、主人公はひとり手酌で酒を飲んでいます。やがて夜の闇に包まれ月が昇ると、自分の影もくっきりと現れます。

たった一人、いや月もいる、影もある。今宵はこの三人でおおいに飲もう。

とはいえ、月も影も一緒に飲んでくれるわけではない。

そんなことはわかっている。こんな素晴らしい春の宵。たった一人ではもったいない。月と影と楽しむふりだけだっていいじゃないか。

ほらほら、私が歌えば月もふらふらついてくる。

踊れば影もくねくね真似をする。

飲み交わすひとときは楽しいねえ。

酔いつぶれた後は…月は月、影は影に戻ってしまったが。

月よ影よ、今後ともよろしく。

次に会うときはあの天の川のあたりで。

楽しそうでありながら、深い孤独感も感じます。

現実逃避、やけっぱちの心もあるような気がしますが、いつしか詩人みずからが作った幻想の世界に酔いしれていったようにも思えます。

最後の句はさすが李白、壮大な天の川でちゃんちき騒ぎをする約束を月と影と交わすのでした。
『月下独酌』の形式・技法
五言古詩です。「古詩」とは、盛唐時代に確立された近体詩が平仄を整然と配置したのに対し、平仄の配置を考えない詩のことです。五言古詩は1句が5字で、句数は不定です。

『月下独酌』が詠まれた時代
唐の時代区分(初唐・盛唐・中唐・晩唐)
唐詩が書かれた時代は、しばしば初唐(618~709)・盛唐(710~765)・中唐(766~835)・晩唐(836~907)に分けて説明します。時代の変化を表わすとともに、詩の持ち味の変化も表します。

『月下独酌』が詠まれたのは盛唐の頃です。


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