見るものは

　見たままを描くのを「写実」といいますが、「見たまま」というのもその人の「目」というフィルター越しですから、どんなに忠実になろうとしても、いかに克明に描こうと、そこはどうにもなりません。むしろ、それ（個の目や技術を通して）によって芸術は成立します・・・ある種、主張と言えるものです。
　いわば、世界は空像です。見るものや、感じるものによって、また意識するもの（こと）によって、世界は「個々に」あらわれてきます。

　わたしたちが「そうだ」というとき、必ず「わたし」というフィルターにかけています。水は蒸発すると水蒸気になります。わたしの目には映りませんが、それを「ない」とは言えませんね。
　なんであれ、わたしたちの目に見えるものの姿は、そんな無限の変化の一形態に過ぎません。
　自然の一部である人間（わたし）ですが、いまではそのようにとらえることが難しくなっています。いまは「わたし」ですが、はるかな過去にさかのぼり、あるいは遠く未来を思うとき、わたしとはなんであった（なんであるのか）のか・・・。

　生まれる、老いる、亡くなる・・・。状態に惑わされると怖れを抱きます。時間の概念や状況で「頭」が占拠されているのですね。
無心に打ち込むものの尊さをふと思います。子供がイキイキしているのは、状態や状況に惑わされず、一心に自分自身に徹しているからでしょう。なにを見るか、なにを感じるか、なにを意識するか・・によって、世界は創造できる、再編できるのではないか。 https://t.cn/Rxu1w68

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